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“皇后美智子さまが伝える愛情あふれる育児宝典 ナルちゃん憲法”  松崎 敏彌 著を読んで 2

2025/11/26

       ~ナルちゃん憲法は、是非若いお母様方に読んで頂きたいと思う“育児書”だと思います。~
                      ~浩宮さまへの美智子さまの対応の一つ一つが、自分の中で腑に落ちました。~
           ~その中でも一番大切な事だなぁ・・・を思った事は、
                                    育児の対象者のお子様に目を向けた対応であった事です。~
 私は、36歳の時から28年間小児科医として勤務していました。私は独り者で、子供はいませんが、臨床でお会いするお子様一人一人が自分の子であったら・・・、街で出会った子が自分の子であったら・・・、と思いながら、目の前のお子様に接触して来ました。だから、外来ではついつい余計なお話をお子様とする事も多く、他の病院関係者の方や付き添いで来られたお母様やお父様には、“ちょっと変わった先生”と映っていたのではないでしょうか?
 その“ちょっと変わった先生”と映っていた原因は、私の経歴にも起因していたのではないかと思います。音大時代は、教師になるつもりもなかったのに、教育法なども選択していたし、教育実習にも行きました。看護学校時代には、小児科や産婦人科で実習もしていましたので、オムツ替え、哺乳、乳幼児の食事介助を経験しました。その経験を経て、医学部に行き、小児科医になったので、自分の経験が生かせる小児科医になりたいと思っていました。医学部では決して取る事が出来ない教育関係の学びを他の先生にはない特徴として生かせたら・・・とも思っていました。
 もう一つの特徴は、独り者で通したお陰で、いつまで経っても子供の気持ちで目の前のお子様が思っている事を慮ろうとして来た事でしょうか?『私ならこうされたくない!』と思う事は、目の前のお子様も『もしかしたら嫌かもしれない。』と思う事は、ご両親ではなく、目の前のお子様に目を向ける様にして来ました。総じてお子様は痛いことをされるのは嫌だし、私自身も小さい頃は注射される前から注射器を見ただけで泣き出していましたので、『ちょっと痛いよ!』とお子様には正直に話をし、『でも、○○秒で終わるから・・・』とか『腕の力を抜いて、大きい声で1,2,3・・・と数えていて。数え終わった瞬間に終わっているから・・・』とお子様にお話をし、約束を必ず守る様に私も必死に取り組みました。約束を守る事で、泣き叫んで予防接種をさせてくれなかった子が、その一瞬を我慢出来る様になるから不思議です。
 喉を見られるのも嫌がる子が多く、『私たちが見たいのは、喉ちんこ(失礼🫢)の周りの所だからね。お家で歯を磨いた時に大きなお口を開けてそこが見えるのにはどうしたら良いかお母さんとやってみて。そこが見えたらこの棒(舌圧子)は使わないと約束するよ。』とお話しします。そのうちに、私の外来に来ていた子は、『それ使わないで。大きなお口開けるから。』と自ら言ってくれる様になります。それが出来る様になるだけで、お子様達は何か高いハードルを乗り越えた様に自信を持ってくれるから不思議です。
 決して小学校以上のお子様ではないのですよ。言葉が喋れる様になり、その単語数も増えてくる時期になる2~3歳のお子様でも、必死に説得している私の気持ちを察するのでしょうね。お母様にも誘導されながらだんだん頑張れる様になっちゃうんです。だから、私も諦めずに小さなお子様でも声を掛けて説得します。採血も予防接種も大人が数人で押さえ付ければ簡単です。でも、その行為を嫌というお子様の気持ちは変えられません。嫌であっても耐えられるか、どんどんお医者さん嫌いになるかは、ここが別れ道です。
 私も大の注射嫌いでした。私の時代には、小学校で集団接種をしていたのですが、友達の前では泣けません。肩に力を入れて、腕を差し出す私に校医さんが笑いながら『肩の力をぬいてごらん。力を入れていると却って痛いんだよ。』と声を掛けてくれたんです。そうしたら痛くなかった!この経験が、私の宝になりました。そして、『注射はもう大丈夫!』って思える様になったんですよね。
 一律に、次々に注射を打つ校医さんだったら、私はこんな経験は出来ませんでした。その言葉掛けが私の“注射のハードル”を大きく下げてくれました。小さな言葉掛けが、大きな自信になったんです。その時の経験が、子供の時の自分の役に立っただけではなく、大人になり、小児科医として働く様になっても役に立ったんです。子供の時の経験や記憶って宝物ですよね。
 前置きが延々と長く続いてしまいました。“皇后美智子さまが伝える愛情あふれる育児宝典 ナルちゃん憲法”の中の第1章の【愛情】の項に子供にできることのよろこびを与えるという項があります。牛乳があまり得意でなかった浩宮さまに美智子さまがとられた作戦は、『ナーイ』でした。コップ一杯に牛乳を注がれ、『これを飲みなさい。』と強制されれば、益々牛乳嫌いになってしまう・・・と思われた美智子さまは、少しの量を入れて、それを飲み干した浩宮さまに『ナーイ』を伝えてもらうやり方です。そのお声が掛かったら、もう少しコップに追加します。そして、少しずつその日に飲める量を増やして行くのです。少しが飲めたら褒められ、追加が飲めたらさらに褒められ、子供にとってこんな嬉しい事はありませんよね。こんな風に、食べ物の好き嫌いをなくされていったそうです。その為に食事の盛り方も軽くよそって、ご自身の手で空に出来ると『ナーイ』をお伝えになり、周りの方々に褒められながら好き嫌いをなくされた様です。食べ終えられた事が褒められ、嬉しいと感じ、出来た事で自信が付く。小さい一つ一つの行為が成長に繋がって行く。自信につながって行く。たわいのない小さな一つ一つの行為が“自信”という意味のある積み重ねになる。そんな育児方法だと思いました。
 ここには、もう一つ隠されている大事なポイントがある様に私は思います。それは、お母様の視点がどこに向いているかという事です。育児書に書いてある事は所謂“マニュアル”です。そのやり方を実践する事が100%その子に合ったやり方かどうかは判りません。育児書のやり方はあくまで参考です。それを頭に入れて、自分のお子様を見て『自分の子には・・・』とお母様が考えて実践される事が何より重要な事だと私は思います。美智子さまは、お子様である浩宮さまには何が出来て、何が出来ないか。出来ない事のハードルを下げて、それが飛べたら次のステップに・・・を細かく実践されていらっしゃいます。そこが私は本当にお子様に“できることのよろこびを与える”事になり、育児の大事なポイントである様に思います。
 私の父は、父と母の実家を訪ねた時、私の祖父や祖母がたくさんのご馳走を作って迎えてくれて、『たんと(沢山)食べな。』と勧めてくれました。父は、『この子には勧めないで下さい。言われなくともたんと食べますから。』と言って笑いを誘っていました。私には、少なめの盛りは要らない育児だったんですね。
 お子様に“できることのよろこびを与える”方法を沢山のお母様に知って頂きたく、そして、そこにはご自身のお子様に向き合って頂きながら勧めて頂きたい事をお伝えしたかったバーバでした。

 

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